更新日:2024年9月7日
請求書は商品やサービスの代金を回収するために発行され、「取引の証明」「支払いトラブルの予防」という点で重要な書類です。 会社によっては経理担当ではなく、営業担当など経理以外の職種のメンバーが発行することもあるでしょう。
請求書業務はお金に関する業務であり、さまざまなリスクが伴います。また、営業で物やサービスを売るのと同じくらい、売掛金の回収は重要な業務です。請求書作成業務を含む事務職の募集も多く、請求書作成について一通り理解できていると、転職に役立つことも多いでしょう。
今回は、請求書作成業務について、役割や業務の流れ、リスクを紹介します。チェックリストによって細かなステップや注意点もご紹介するので、ご参考にしてみてください。
請求書業務って?
事業をする上で、請求書は欠かせないものです。商品やサービスの提供をした後に、契約通りにその代金を回収するための役割を果たします。また、取引が実際にあったことの証明として重要な文書となるため、支払いが行われなかった場合に請求書が証拠の書類となることもあります。
請求書業務は、取引の後に請求書を発行したり、代金を回収したりする業務のことです。また、売上管理や支払い処理、データ入力やチェックなど幅広い業務に係わります。業界にかかわらず、どの企業でも行われている定型業務です。
取引先やお客様が相手になるので、請求項目や金額、宛名などにミスがないか、細かくチェックしながら進める必要があるでしょう。請求漏れが発生すると資金繰りにも影響するため、各企業にとって重要な業務です。
請求書は取引内容の証明書
法律では、必ず請求書を発行しなければならないと決められているわけではありません。取引内容について、売り手と買い手の間で合意を得て証明することができるのであれば、請求書は必要ない場合もあります。
しかし、日本では取引があった際に請求書を発行することが慣習となっています。請求書で料金を確認したり支払い方法を確認したりすることができるため、双方にとって請求書がある方がいいと考えることが多いでしょう。どの取引先にどの商品やサービスを提供したのか記録に残るので、後にトラブルがあって参照する際にも有効です。
また、税務調査において取引内容の証明として請求書が必要になることがあります。特別な理由であえて発行しない場合を除いて、請求書は正しいやり方で発行することが重要です。
請求書業務の流れとは
請求書業務には複数の手順があり、初めての人や慣れていない人にとっては複雑に感じることもあるでしょう。おおまかな流れを把握しておくと、それぞれの業務も理解しやすくなります。
商品やサービスを販売した企業、つまり請求書を発行する側は、請求を確定させて請求書の作成に入ります。社内で承認プロセスを経て請求書を印刷して準備が整ったら、封筒に入れて取引先に送付しましょう。期日が来たら入金の確認をし、未回収の請求がある場合は催促します。
商品やサービスを購入した企業、つまり請求書の受領側では、請求書を受け取ったら経理部門へ回します。経理部門では請求内容の確認作業に入り、必要に応じて仕入れ担当と協力して内容を精査することがあるでしょう。帳簿への入力など必要な会計処理を済ませて、支払いが済んだ請求書は保管します。
ここでは、詳しい請求書業務の流れを5つのステップに分けてご紹介します。
1.2種類の請求と集計
ビジネスの世界では、「締め請求」と「都度請求」といった2通りの請求方法があります。それぞれで請求のタイミングが異なるので、確認しておきましょう。
締め請求は、取引先とあらかじめ取り決めておいた締め日に、複数の取引で発生した請求をまとめて行います。通常は1カ月分の代金をまとめるが多く、締日として毎月20日や月末などが指定されていることが多いでしょう。毎月継続的な取引があって信頼をおける取引先によく用いられる請求方法です。
都度請求は、商品やサービスを提供するたびに、代金を相手に請求する方法です。新しい取引先や数回限りの取引など、継続的な付き合いがない場合に選ばれることが多いでしょう。
集計の方法も、集計方法によって異なります。締め請求では、締め日に金額をまとめて集計し、請求金額が確定します。都度請求では、取引ごとに金額が集計されます。
2.請求書の作成と発行、承認まで
集計によって金額が確定したら、請求書の作成に入ります。規模や取引件数がそれほど大きくない企業では、エクセルを使って請求書を作成することが多いでしょう。この場合、優れたエクセル処理能力を持っていると業務に役立ちます。ただし、エクセルではデータの分析に時間がかかることや税務処理に応用しにくいといったデメリットがあります。このため、規模が大きい企業では、ITサービスやツールを使って請求書業務を行い、システム上でデータの蓄積や分析を行っていることが多いでしょう。
請求書に必ず記載すべき内容は、下記の通り、5つあります。
・請求書を発行する請求者の企業名、氏名
・請求先の企業名、部署
・取引内容(商品やサービスの内容、単価や数量、合計金額)
・取引金額
・取引年月日
注意点として、請求書を発行した後は社内での承認が必要です。誤った内容で先方に送ると失礼にあたるため、社内で充分に確認してから送りましょう。また、社内確認プロセスには時間がかかることもあるので、請求書はなるべく早く発行して準備しておく必要があります。
3.請求書を送付する
社内での承認が終わったら、請求書を取引先に送ります。送付方法として、郵送やメールなど、複数の方法があります。郵送する場合は縦型の長3封筒を使うことが多く、請求書を3つ折りにして入れます。請求書を折る場合は、内容の部分を中に折り込むように注意が必要です。また、開いたときに「請求書」のタイトルがすぐに見えると相手にとってわかりやすいでしょう。
請求書を電子的に送信する場合は、電子署名を付与する工夫が必要です。電子署名は作成者の証明をする役割があり、付与されていない場合は正式な請求書として認識されない場合もあるので注意しましょう。
4.入金確認
請求書発行側では、取り決めた期日までに指定された銀行口座に取引先からの入金があったかを確認する作業が必要です。明細を確認し、請求書に記載された金額と入金額が一致しているかをチェックします。取引先による金額のミスが発生する場合もあるため、重要な作業です。金額や振り込み側の名義が取引先と異なる場合は、早急に取引先の担当者と確認する必要があります。入金の確認が終わったら、入金伝票の作成や仕分け、売掛金の回収などの経理処理を進めます。
締切期日に送金が行われるケースが多くなっていますが、中には早めに振り込む取引先もあります。したがって、こまめに入金確認を行うことが大切です。
5.未払いの催促
請求書で指定された支払期日までに入金がない場合は、取引先と確認を行ないます。売上金が上がっていても、売掛金が未回収のままだと、資金繰りの状態に悪い影響を及ぼします。回収できないと、黒字倒産につながってしまうこともあるでしょう。期日を過ぎても入金の確認が出来なければ、早急に取引先の担当者と話をしたり督促状を発行したりするなどの対策が必要です。
入金リストで消し込みを行っていくことは単純な作業ですが、企業の資金を確実に回収するための重要なステップです。手作業が大変な場合は、エクセルやシステムを使って自動化するなどの対策があります。入念に確認と催促を行っていきましょう。
また、ここでも確認漏れやミスがあると取引先に失礼になることがあるため、確認の精度を上げることが重要です。
■請求書の受領
商品やサービスを利用した側にとっても、支払いに関係する請求書は重要な書類です。支払う側では、請求書の受領を確認したら経理部へすぐに回します。経理部では請求書内容が精査され、帳簿への入力など会計処理が行われます。請求書内容に疑問がある場合は、購入を行った仕入れ担当や請求書を発行している企業の担当者などと確認することがあるでしょう。
請求書の受領側でも業務に複数のステップがあり、効率化が課題となっています。請求書業務のために出回っている自動化システムは請求書の発行側を想定して作られたものが多く、請求書を受け取る側ではなかなか業務を効率化できないのが現状です。また請求書の発送方法は発行側が決めることが多く、なかなか社内でペーパーレス化を進めることができないといった問題もあります。
請求業務に関わるリスクとは
請求業務には複数のステップがあるため、時間がかかります。ペーパーレス化しにくいなど、効率化でも課題があります。それだけでなく、金銭に関わる請求業務では、リスクが伴います。
ここからは、請求業務に伴う3つのリスクをご紹介します。あらかじめリスクを認識しておくことで、できるだけスムーズに業務を進めましょう。
1. 経理以外が請求書業務を行う場合
小さい規模の企業では、経理部門でなく営業担当等が請求業務を行うことがあります。請求業務には時間と手間がかかるため、営業マンが本来取り組むべき顧客の新規開拓や顧客のフォローに時間が取れなくなってしまうことがあるでしょう。日々の業務に追われてしまい将来への施策が取れないと、経営にも影響してしまうことがあります。
また、営業部と経理部が部門をまたいで経理業務を行うことになり、責任の所在がはっきりしないという点もリスクになります。資金の回収に関わる業務なので、少ない人数でも経理部で一括して担当できる仕組みづくりが重要です。
2.横領が発生するリスクがある
請求業務はお金に関わる業務なので、従業員による横領が発生するリスクがあります。報道されるような億単位の横領はごく稀ですが、請求業務を担当する社員が横領を行うケースは、残念ながら少なくありません。
請求書を文書で作成せずに、取引先に口頭で請求し、取引自体を隠蔽し、そのまま担当者が個人で売上金を手にするといったケースなどが考えられます。請求書の発行手順に社内での承認プロセスが含まれるのは、従業員による不正を防ぐためでもあります。
手作業での請求書業務は横領のリスクが上がってしまうため、横領のリスクを軽減するためにもシステムを導入するなどの工夫が考えられます。
3.常に未払いのリスクがある
請求業務には、常に未払いのリスクが伴います。特に、取引をする前に与信調査を怠っていると、未払いのリスクは高まってしまうでしょう。
与信調査は信用調査とも呼ばれ、取引先の金銭的な信用度合いに関する情報を調することです。与信調査には、過去の取引データをもとに信用の有無を判断する「内部調査」、取引先の企業に問い合わせて経理担当などと聞き取りを行う「直接調査」、登記簿や帝国データバンク等の第3者が持つデータから判断する「外部調査」の3通りがあります。
複数の方法で調査を行ない、総合的に信用度を評価する必要があるでしょう。ただし調査には時間と工数がかかるため、与信調査を代行してくれるサービスや売掛金の回収を保証してくれるサービスを利用する手もあります。
健全な経理処理のためのチェックリスト
健全な商取引を行うためには、チェックリストを活用して経理処理を行うのがおすすめです。商品やサービスを提供した場合は、事前に取り決めた対価をきちんと回収する必要があります。上記でご紹介したリスクを防ぎながら、代金を漏れなく期限内に回収していきましょう。支払いが滞っている取引先があれば、確実に催促を行います。催促した後にも入金確認などが必要なので、追跡作業も怠らないようにしましょう。
売掛金が回収できないと資金繰りにも影響するため、商品を売ることと同じくらい請求業務は重要な位置づけです。信頼できる人材によって、健全に経理処理を行っていく必要があります。
ここからは、健全な経理処理のためのチェックリストをご紹介します。ご参考にしてみてください。
1.商品内容と金額を登録
提供する商品やサービスの内容と単価を記載します。扱っている商品やサービスの名称、単価、コード番号等を登録しましょう。この時点で内容に誤りがあると後から双方で照合できなくなるので、ミスがないように登録します。
2.取引先を把握
商品やサービスを提供した先の企業名、住所、郵便番号、連絡先、担当者などを登録します。健全な取引をするためには、取引先の情報を正確に把握しておく必要があります。少しでも情報にクリアでない部分があれば、担当者に確認しておきましょう。
3.請求書を作成
商品やサービスの取引を決める際には、前もって見積書が発行されます。双方で合意を得た見積り書を参照し、請求書を作成します。作成後送付する前にはもう一度内容や宛名の確認を行ない、誤りがないことをチェックしましょう。社内で承認プロセスを設け、複数の人の目で見て確認することも重要です。
4.入金の有無をチェック
請求書を送付したら、取引先からの入金の有無をチェックしていきます。入金リストを作成して消し込みを行っていくのが便利です。請求金額と相殺していきましょう。ここで間違えてしまい入金があったのに催促してしまうと、先方に失礼にあたってしまうので注意が必要です。
また、いつもと異なる動きがある場合は、早めに取引先の担当者と確認します。口座の名義や金額など、細かくチェックしましょう。
5.未入金を確認
支払い期日が過ぎても未入金の取引先があった場合は、再請求や催促、督促などを行っていきます。この際に、自社の発行した請求書に誤りがないかなど再度チェックしたうえで催促や督促を行うのがポイントです。異常がある場合、取引先に受理されていない可能性もあります。
また、同時進行中のクレームなどの問題がないかどうか、営業部門と確認してみるのも効果的です。何かの理由があって支払いが滞っている場合は、どのように対応するのか状況を見て上司や他部署に相談する必要があるでしょう。
6.過去の取引先を確認
過去のデータを参照しながら、当月の取引がなくても過去に未入金がある場合は催促を続ける必要があります。当月のデータだけでなく、過去の履歴をチェックしながら請求業務を行うと取りこぼしがなくなるでしょう。
督促状を作成しても支払いがない場合は、メールや電話などでのコンタクト、直接訪問などの手段があります。
責任感のある人柄が求められる
今回は、請求書作成業務の内容や流れについてご説明しました。企業の規模や規定によって細かい手順は変わりますが、基本的な流れは今回ご紹介した通りです。請求書を発行する販売者側にも、請求書を受領する購入者側にも、複数のステップがあります。
請求書業務はお金を扱うため、企業にとってリスクを伴う業務です。責任を持って取り組む必要があるため、担当者にとってはやりがいの大きい仕事になるでしょう。業務を円滑に行って確実に取引先から資金を回収していくために、企業は責任感のある人柄を求めています。また、システムの導入などによって、リスクの軽減や処理の効率化を図る仕組み作りに取り組む企業も多数あります。
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